中国電力事情 T.上海電力事情


<上海から〜「中国レポートNo.18,No.19」>
中国進出における、懸念要因

T.上海電力事情の現状 
 本年、7月から上海は記録的な猛暑に見舞われた。昨今のめざましい経済発展と市民生活の向上とによって電力消費の伸びは、中国政府の予想を越え限定的な地域停電を行わざるをえない状況となった。  
 
過去十数年間、中国政府は外資導入を進めるために、エネルギーを重要な課題と位置づけて電力インフラを拡充してきた。そのために1994年以降の中国進出企業においては電力の供給不安は解消され、多くの外資企業の中国進出を可能にした。それらの企業は自社内において、電力のバックアップシステムは殆ど導入さてはいない。
 
そのため、今夏の電力不足問題は概に中国進出している企業にとっては、今後の事業継続に大きな課題となり、今後中国進出を検討している企業にとっては大きな不安要因となっている。  
 
一部の日系企業や中国内においても、本年7月から一部の稼動を始めた、三峡ダム発電が軌道にのれば、電力供給問題は解決されるとの認識もあるようだが、これは全くの誤認である。

三峡ダム発電は、最大出力でも1,800万Kwであり(実働は1200万Kw程度と予測)華東地区にはその50%、上海地区には更にその40%程度しか供給されず、全体の20%(約250万Kw)でしかない。 (三峡ダムの発電ユニットは26基、1ユニットの最大出力は70万Kw、連続定格出力は50万Kw)

 更に、上海電力の発電能力は約950万Kw、最大負荷は約1350万Kwで、400万Kwは外部からの購入に頼っている。昨年の電力消費の伸びは約9%(約120万Kw)で、今後伸び率が鈍化したとしても、毎年100万Kw程度の増加が見込まれる。2010年には上海国際博覧会が実施され、これに伴う電力需要の伸びも考えられる。

 三峡ダム発電が5年後に全設備稼動したとしても、その供給能力は消費電力の伸びの約50%を補完する程度でしかない。勿論その他にも、中国政府の発電所設置の計画はあるが、それを持ってしても、上海地区の電力不足が将来に渡って解消されることは困難であると推測される。

 中国経済は、外資の導入によって著しい発展を遂げてきたことは歴史的事実であり、今後においても外資導入に期待しなければならい状況に変化はないであろう。そのためには電力エネルギーの問題解決は緊急の課題であり、その対策にそれほど多くの選択肢はない。


U.上海の電力不足に対する措置
  (1) 行政的措置
  @大電力契約事業所の設備を点検
  A土日の休日を平日に変更・調整
  B緊急を要しない大電力契約事業所への電力供給制限
  C電力消費の大きい事業所への生産設備停止の要請

(2) 価格調整
  @7〜9月までのピーク時とそれ以外の時間の価格比を3.5:1から4:1に変更
  A13時〜15時の最大供給量は通常の90%以内に制限
  B上記、90%以上の部分に基本料金の2倍の金額を設定
 
 

V.今後の対応
   今後の対応において最も効果的な方法は、現在中国進出を果たしている企業は、自家発電の導入をすることである。契約電力の30〜50%の自家発電を導入すれば、電力供給制限に対応は可能である。これは、今後進出を計画している企業においても同様である。  
 
 過去中国進出において自家発電機を導入している企業もあるが、その多くは停電後発電機を起動させて電力を確保するシステムであり、この方法では10〜15分程度の停電は回避できない。  
 
 現在のような、情報化が進んだ体制においては、瞬時の停電も許されない場合もあり、無停電システムを導入するには、電力会社の電力と連結系統を行わなければならない。この場合、電力会社との折衝が不可欠で、計画に関する事前の調査が必要である。  
 
華東地区においては、自家発電の導入は事前の許可・承認を受ければ可能なようである。大連の開発区では、原則禁止になっている。  
 
自家発電機導入における課題
@ 法律・制度・規制の解決
A 電力会社との関係
B 開発工業区管理公司との関係
C 常用使用に対する信頼性
D 保守メンテナンス対策
E 自家発電導入に関するコスト負担


 連結系統常用発電が可能であれば、前記の買電コストより安価に発電が出来るために、設備償却が可能な場合も考えられる。


< 参考・補足 > 
  
<参考>

 電力料金   : 13円/Kw・h(弊社、参考)
 発電コスト  : 約8円/Kw・h ( メンテナンス費用を含む )
          差額5円(プラス)/Kw・h 
 設備コスト  : 80,000円/Kw ( 導入設置費用・諸経費を含む )
 稼動時間  : 4,000時間/年間 ( 16H×250D )
 コストメリット : 20,000/Kw・h・年間 ( 5円×4,000時間 )
 単純償却  : 4年 ( 80,000/20,000 )
 * 電力料金は地域によって異なります。
 * 設備費用は、設備の規模・システムによって異なります。
 * 稼働時間は各事業によって異なります。


<補足>

中国電力事情に関して、多くの情報を収集分析しております。情報量が膨大なため、Webに記載することは出来ません。情報をご希望の方は、下記メールアドレスまでご連絡下さい。


         上海平野(瑞穂)磁気有限公司   董事長  平野 信幸


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      2003年8月10日

 
 

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T.日系企業の状況 
   前回のレポート<中国電力事情>について、多くの方にお問い合わせを頂きその関心の高さを改めて実感した。今夏の猛暑により、上海では限定的な停電が発生した。この状況は8月下旬一時回避されたが、9月に入ってからも、気温35度以上の日が続き、地域によって電力事情は、今だ回復しているとは言い難い現状である。
 
 多くの日系企業は、生産コストの削減を主な目的として中国進出をしており、品質の確保と生産の安定化のために、高額の生産設備を日本から移設している。中国での生産コストで最も比重が高いのは、日本から持ち込んだ生産設備の償却と言われ、その設備償却を出来る限り早期に実行するために、殆どの企業が、2直・3直、あるいは休日無しのフル操業を行っている。
 
 そのために、1週間に一度の停電とは言え、24時間稼動の企業においては生産予定の振り替えは不可能となる。また、長時間連続運転において生産が安定する、真空や熱・化学反応等と利用する設備においては、前処理・後処理の工程との関連が重要で、一時的と言えども停電の発生は設備の稼働率を30%以上低下させることにもなる。
 
 多くの日系企業からの情報収集において得た印象は、「諦めの境地」の一方で「具体的な自家発電機導入の検討」で、あった。これは、三峡ダム発電に期待を寄せていたが、「2010年まで上海における電力不足は解消されない」との、公式な発表を受けたためだと推測される。(2003−8−12、上海市電力公司調度通信中心発表)
 
 

U.電力不足による認識の相違
    停電に伴う影響について、日系企業と中国サイドにおいて、大きな認識のギャップが存在している。告知停電による生産活動の影響の大きさについて、「告知する側は過小評価をしており、受ける側はその問題の重要性をアナウンスしていない」ように見受けられる。  
 
 幾つかの開発区担当者に状況を確認すると、「当開発区では、時々停電はするが問題はない」と聞く。「停電すること事態が問題である」ことの認識は極めて薄い。  
 
 弊社の総経理に、この認識の相違について、貴重な解説をもらった。 『中国では、「95%は100%と同じ」と考え、日本では「95%は不完全で0%と同じ」と判断する。』  
 
 まさに、この視点の違いに大きな認識の相違が存在しているように思える。開発区の企業招致における担当者の回答には、この意識の違いに充分留意する必要があるであろう。現地の情報は代理人ではなく、企業が直接現地調査を行い実態を把握する必要があると思われる。それも視察団の同行によるものだけではなく、進出企業に直接個別面談して情報収集をしなければ実態の掌握は難しい。  
 
 また、情報の収集は複数の情報源によって確認することが肝要である。一つの情報源のみでの情報は個別の事情によって異なっており、信頼性が低く状況判断を誤るおそれがある。  
 

V.地域格差
   電力不足に伴う情報収集において、「ある地域では殆ど影響はなく、所によっては一週間に数度の停電が発生した」など、その影響は開発区や地域によって、大きな格差が発生している。
 
 この状況から推測すると、今夏の停電の要因は発電力不足もあるが、送受電システムにおいても急激な経済発展伴う電力需要の増加にインフラの整備が追い付いていのではないかと懸念される。
 
 インフラ整備の状況は、開発計画の時期、規模、進行状況、重要度によってその違いが生まれていると考えられ、その判断は容易ではなく、充分な現地調査が必要である。 いずれにしても、この数年間においては停電の発生は避けられない状況であり、自社の生産における影響の度合いによっては、自家発電装置の導入を前提において対応する必要があるのではないだろうか。
 
 電力不足だけではなく電力料金にも地域格差が存在している。上海地区とそれ以外では料金体系が違い、また上海地区内においても開発区によって料金の相違がある。これは、開発区・工業区が直接電力会社から電気の供給を受け、区内の企業に開発区独自の料金設定をしているためである。
 
 中国の電力料金には、契約電力・変電設備容量・使用電力と三つの料金があり、使用電力には、ピーク時・平時・夜間の時間帯によって料金が異なる。また、来年以降はピーク時には契約電力の90%以上の電力に対して、2倍の料金設定も検討されている。
 
開発区の資料における電力料金は、契約電力が記載がされず平時の電力料金のみで該当開発区の電力料金と説明される場合もある。夜間電力は平時の40%程度で、平均電力料金を24時間稼動の事業を参考として、安価な印象を与える場合も見受けられる。開発区の説明担当者は、専門知識が豊富であるとは限らず、説明内容や資料のみで状況の判断をすべきではない。
 

W.自家発電装置導入の課題 
   前回のレポートにおいて自家発電装置導入の課題として下記を上げた。

 @ 法律・制度・規制の解決
 A 電力会社との関係
 B 開発工業区管理公司との関係
 C 常用使用に対する信頼性
 D 保守メンテナンス対策
 E 自家発電導入に関するコスト負担
 自家発電装置導入企業にとって最も重要なのは、Eのコスト負担であろう。そして導入に際しては、@とAの規制及び電力会社・供電局との折衝が最も重要になる。自家発電のコスト負担(コストメリット)はこの問題が直結している。それは、発電装置の運転時間と負荷率がコストメリットの大きな要因だからである。Cの常用使用に対する信頼性は、多くの実績がある日本製の発電装置が適当と思われる。
 
 日本では、概に4,500箇所の事業所で総発電電力650万Kwの自家発電が常用として稼動している。これは本年、試験稼動を始めた三峡ダム発電所の約50%・原子力7基分の発電能力に相当する。
 
 停電における損失を除外するとして、買電の電力料金と発電コストのみで設備の償却を可能するには、年間4,500時間以上の運転と、80〜90%負荷でその変動が軽微な使用条件が必須となる。その実現に最も可能性があるのは、電力会社の電力と発電装置の電力を接続して並列運転をすることであるが、この問題解決が中国では大きな障害となっている。
 
 これまでの情報収集では、華東地区において法律的な規制はないようだが、電力会社は自家発電装置の並列運転に極めて大きな拒否反応を持っている。この問題解決は一企業の話し合いでは殆ど不可能に近と思われ、日本における実績での安全性と環境に対する影響の情報を提供し、日系企業や関係組織が粘り強く交渉しなければ実現は極めて難しい状況である。
 
 設備のコストから勘案すると、導入する発電装置は1,000KW以上が想定される。この装置を並列運転なしで導入メリットを得るには、時間や季節の負荷変動の充分な調査を行ない発電装置に接続される負荷を選定しなければならない。変動の少ない負荷が1,000Kw近くになる事業は限られており、自家発電装置導入は限定されて多くの企業ではその導入が困難となるであろう。
 
 

X.ESCO(エネルギーサービス)事業 
   一定の規模ににおいて、電力使用の平準化が困難な場合、同じ開発区内で数社が共同で自家発電装置を導入し、その電力を共同使用することも有効な手段と考えられる。
 
 中国では、中国進出企業が進出の際に提出した事業目的外の事業を行なうことは禁止されている。さらにESCO事業はサービス産業であり、日本企業が独自に行なうことは困難であると思われ、中国企業との協力関係が不可欠となる。
 
 ESCO事業は過去に無かった事業と思われ、関係団体企業との調整も必要となるが、上海地区内の開発区では概に実施されているところもあり(例外的措置と伺った)、全くの可能性がないわけではないと思われる。
 
 ESCO事業及び自家発電装置の導入は、分散型発電所として機能し、必要な場所で必要な電力だけを供給し、外的要因を受けることも少ない。また、原子力や水力発電所のような巨大設備ではないために移設・移動が可能で、必要な投下資金も少なく、数年間の短期的な対応も出来る柔軟性に優れたシステムだと言える。
 
 また、自家発電はエンジンや排気の熱を回収し、熱エネルギーとして利用する電熱併給(コージェネレーション)として活用が可能である。コージェネはモノジェネ(発電のみ)に比べ消費エネルギー効率が飛躍的に高くなる。(モノジェネ:約30%、コージェネ:60〜80%)
 
 2002年2月26日に制定された中国・国務院規定第346号(同年4月1日施行)によれば、「コジェネレーション発電所の建設と経営」は、ソーラー発電や風力発電と共に、外商投資プロジェクトの奨励事業に分類されている。
 
 日本の26倍の広大な国土を有する中国にとって、携帯電話の経済性・便利性と同様に、分散型の発電所の設置は、壮大な送電インフラ設備を必要としない経済的で有効な方法ではないだろうか。
 
本年、9月8日に福建省アモイで開幕した「第7回中国投資貿易商談会」において、商務部の呂福源・部長は、「対外開放は中国の国策であり、外資投資の受け入れがその重要な内容だ」と、改めて指摘し、「中国経済における外資の重要性を強調、市場開放の拡大や政策の透明度向上など、受け皿の整備を今後も続ける」と声明を出した。
 
企業の自家発電導入に関して、「政策の透明性」が期待されるところである。
 
 

< 追 記 > 
   前回のレポートにおいて、発電機導入コストを検証する予定でしたが、前述のようにその前提となる電力料金が地域・開発区で異なり、また来年は料金の制度変更も考えられ、コストの検証は割愛させて頂きました。

 進出地域や業種・操業時間・予測電力使用量等の情報を頂きますれば、個別にその地域の電力料金と共に、検証・アシストをさせて頂きます。

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         上海平野(瑞穂)磁気有限公司   董事長  平野 信幸


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      2003年9月10日

 

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