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| T.日本政府・報道機関の対応への疑問 |
SARSの発生は、「昨年11月に広東省で起きたのが最初であった」と、言われている。中国政府の公式発表が遅れた為に、感染が拡大して世界的な非難を浴びることとなった。更に「北京における感染状況の情報」が事実との乖離があったために、この問題に拍車をかけている。
昨年11月における原因不明の肺炎は、インターネット上で情報が流されており、「特定の漢方薬や酢が市場から消えた」ことで、多くの人がそれを知ることとなった。この時点においては、「真さに原因不明の肺炎」であり、その情報の信憑性も定かではなかったものと思われる。 当時、「抗生物質の効果がない肺炎」との情報が出されており、発病による死亡者の殆どが合併症によって亡くなったために、その重大性を見逃すこととなったものと推測される。 この時点において、「中国政府が調査を開始していたかどうか」は、知る由もないが、悪戯に騒ぎを大きくしたくなかった意図は充分に理解出来る。 自分が帰属する集団の利益を守るために情報を制限することは、これまでも数知れずあったことで、「過去に自らも犯した過ちであり」、その行為そのものを非難することは極めて困難であろう。 筆者が12月に華南地区に出張した際、現地では既に広く知られており、先進諸国がそれを全く知らず、「中国政府が意図的の隠匿していた」かのような報道は、「自己責任を回避してそれを他人に転嫁する」なにものでもない。一部の報道では、これが「チャイナリスク」と取り上げられたようだが、このような発想をしていたのでは到底問題解決に結びつくことはないであろう。 一般に知られていたこの事実は、各国の政府出先機関においても充分に情報入手が出来る状況にあったはずであり、「現地状況を本国に伝達するのがそれらの機関の重要な職務」では、ないのだろうか。 このような感染力が高く、生命の危険に晒される伝染病は過去にもあったことであり、それに対応すべき対策は、全ての人類が自己の責任として行うべき問題ではないだろうか。「該当政府の正式発表が無いから」として、その責任をその政府に転嫁しても問題の解決にはならず、かえって相互の関係や事態を悪化させる懸念も考えられる。むしろ、今こそ交流の制限を設けず、積極的に協力を惜しまない姿勢が大事な時である。 日本の報道において感じるのは、末梢的現象だけを捉え、「何故このような状況が生まれたのか」本質的な情報分析が行われている様子が見えてこない。 世界中における様々な出来事とその情報分析及び対応は、それぞれの国が自国とその国民の利益のために、自国の責任において実行されなければならない。昨年末の時点において、その情報分析がどれだけ行われ、「日本が医学的先進国として、協力して対応できることはなかったのか」真摯に反省しなければならないのではないだろうか。経済的関係が最も深くなっている中国の問題は、「対岸の火事」では済まず、多大な影響を受けるのは必定であり、常に自国の問題として認識しておかなければならない。 現在の状況は、「未知のウィルスと人類の戦争」であり、人類の安全のために世界的英知を結集して対応されるべき問題である。たまたま、その戦場が中国であり、そしてその前線に立たされているのが一般市民であることを忘れてはならない。 民族や宗教間の争いは、「話し合いで解決できる希望はある」が、「ウィルス」はどのような好条件を提示しても「テーブル」につくことはない。 世界的に問題視されたのは、3月の香港における「集合住宅の集団発生」が確認されてからであった。その時点でも、いや「現在の状況においてでさえも」その対応は、お粗末極まりない。 このような問題が、「もっと情報収集が困難に地域で起こったとしたら」、その重大さには戦慄させられるものがあり、現在のような対応は「過ちの歴史を繰り返すだけである」と感じる。 |
| U.企業の選択 |
4月24日、「トヨタ自動車は北京駐在員・家族の一時帰国指示を出した」
現状のような状況において、中国進出企業がどのような対応を取るべきか極めて困難な問題である。市場の反応、社員への影響、業績への懸念等、経営者としての究極の選択を迫られている。経済は一時たりとも停滞することを許してはくれず、対応が遅れた場合の影響も予測出来ない状況であると思われる。 筆者自身も中国で事業を行っており、「自身の選択判断は?」と問われれば、明確に「上海領事館がある間は帰国しない」と決心している。(自社にも日本人は居るが現地採用であり、会社として帰国の指示を出すつもりはない。もちろん自己判断で帰国するのを禁止することもない。) 図らずも、かつて「中国レポート」で書かせていただいた、「中国人との信頼関係の構築が如何に重要であるか」を、実感している。中国経験の浅い企業が独資の進出を実行している場合、現状は極めて困難な状況であり、「その選択肢は殆どない」と、言えるのではないだろうか。 信頼して任せることができるスタッフがいなければ、駐在員の帰国は「事業停止」を意味しており、強制的帰国禁止は、「その社員に対し予測不可能な苦痛を強いる」ことに、なるであろう。 現在、中国進出をしている日系企業は15,000社を越え、この企業と直接・間接に取引されている企業は数万社以上に及ぶものと考えられる。特に生産設備を納入している企業にとっては、メンテナンス・納品立会い・仕様打合せ等、中国現地での活動が必須でその内容も状況も多岐にわたり、今後その対応に苦慮される事態となることが推測される。また、中国から輸入している製品の検査、検品においても同様であろう。 自社社員の中国出張においては、派遣社員の感染の危険と帰国後の対応が極めて困難となり、また出張社員の帰国との接触も、その対応が懸念される。 中国での活動は、駐在な出張社員の感染の危険に留まらず、そのことによって日本における活動も制限される恐れが充分に考えられる。これらのリスクを回避し、顧客へのサービスを継続する手段としては、現在中国で事業を行い、情報交換が容易で、自由な活動を行うことが出来、技術力と営業力を兼ね備えた企業との協力関係が必要と思われる。 事業活動は停滞することを許さず、それを黙認すれば過去の信頼は崩壊して、市場を失うことになる。逆転の発想をすれば、現状のリスクを恐れず、今をチャンスと捉えることが出来るならば、「そこには大きなビジネスチャンスがある」とも、言えるのではないだろうか。 昨今の、過熱気味な中国報道から観れば、改めて「中国進出の課題」を冷静に再検討できる時間を得られれたと、この機会を生かすべきであろう。 2003年4月25日 |
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